イタリアのパスタ旅20州vol.5「リグーリア州」

紋章入りパスタ「コルツェッティ」と松の実のペースト

Corzetti tradizionali al pesto di pinoli

17世紀、ジェノヴァ共和国で使用されていた銀の盾「コルツェット」が由来とされた紋章入りパスタ「コルツェッティ」。

木製の型に紋章や十字架が描かれ、卵をたっぷり加えたパスタ生地に刻印して作る今や日本でも有名になったリグーリアの生パスタです。

何度作っても楽しいコルツェッティには、定番の組み合わせである松の実のペーストを合わせます。

コクのある松の実とパルミジャーノチーズをオリーブオイルと合わせ、大理石のすり鉢ですって作るこの地の伝統的なソースで止まらなくなる美味しさが特徴。コルツェッティだけでなく、乾燥パスタにも相性抜群です。

東リグーリアで祝祭日に祈りを込めて1枚ずつ作られてきたこの郷土パスタを本レッスンでは、お一人ずつ実習します。

今回のレッスンは写真に納めたくなるかわいさというおまけ付き！

15年前からイタリアで集めてきたコルツェッティ型が教室にはたくさんあるので好きな模様のスタンプを押しながら、パスタ旅のひとときを楽しみましょう。

リグーリアのラビオリ「パンソッティ」とクルミのペースト

Pansotti liguri al pesto di noci

これを作らずにリグーリアは語れないかもしれません。パンソッティは、リグーリアで有名な心に残るラビオリです。

グリーンの野草やハーブとチーズを合わせた詰め物で作るこのラビオリは、イタリアの美しい街「ポルトフィーノ」などリヴィエラ海岸沿いで作られてきました。

卵入りの生地を薄く伸ばし、詰め物をおいてこの土地らしい三角形をベースにした包み方をします。

ジェノヴァ人が日曜日のランチに自分の領土内の野草を集めて作っていたことから、このラビオリはご当地パスタとして今も現地の人に愛されています。

ソースには、野草の風味を引き立てるニンニクの風味を効かせたクルミのペーストが大定番です。

クルミのペーストは、すり鉢でもミキサーでも簡単に作ることができ、生クリームも入らないのにクリーミーなため、普段のパスタソースとしてオススメです。

我が家でも家族に大人気のジェノバを感じるラビオリもお一人ずつ包み方を実習し、ペーストとともにお持ち帰りいただきます。

伝統パスタ「トレネッテ」とペスト・ジェノヴェーゼ

Trenette al pesto genovese

トレネッテは、リングイネのような形をしたリグーリア州の象徴ともされる乾燥ロングパスタ。

南イタリアに伝わるセモリナ粉と水で作る乾燥パスタは、このトレネッテから考えられたとも言われる、この地域を代表するパスタです。

今はリングイネとの違いも曖昧になってきていますが、船乗りたちの間で保存しやすいことから「有利なパスタ」と称された乾燥パスタが考案される前は、トレネッテはセモリナ粉ではなく、白い小麦粉で作られていました。

形はリングイネのように細いものから、やや幅広のものもありますが、今回は昔ながらの家庭で作るトレネッテをご紹介します。

自家製トレネッテは、作ってからのひと手間で乾麺のようなアルデンテな食感と生パスタならではの特徴の両方を手にすることができるのでそちらも合わせてお伝えできればと思います。

白いものと緑を合わせたソースで食べるのがクラシックなトレネッテの食べ方。というわけで今回は王道のペスト・ジェノヴェーゼとジャガイモ、インゲンを合わせたクラシックな一皿をご試食いただきます。

リグーリアの柔らかい葉のバジルと違い、日本のバジルはすり鉢ですりにくく、時間がかかると変色してしまいがちですが、変色しづらく、すりやすいバジルになる裏技も合わせてご紹介します。

ジェノヴァ風ヤリイカとタジャスカ・オリーブのトマト煮

Calamari alla genovese con olive taggiasche

地中海沿いに位置するリグーリア州は、やっぱり魚介がおいしい地域。そしてこの海の背後に迫る低い山のおかげで実る、小粒で味わい深い「タジャスカ種オリーブ」の産地でもあります。

このタジャスカ・オリーブは、酸味と甘みのバランスが絶妙でイタリア国内でも評価が高いリグーリア産のデリケートなオリーブオイルの原料でもあり、そのままつまんで食べたり、料理に使われてきました。

料理に加える場合、一般的なオリーブではただ入れただけの味になってしまいがちですが、タジャスカ・オリーブは、独特の風味と味が料理をワンランク上に押し上げ、旨味が増します。

現地ではウサギ肉や骨つきもも肉で作ることもあるタジャスカ・オリーブのトマト煮もありますが、今回はヤリイカと合わせてトマト煮にします。

イカとオリーブの風味が溶け出たソースは、まるでトマト出汁のようにおいしく、我が家では家族が残ったソースをパンやごはんにのせてきれいに平らげてくれます。

味わい深いリグーリアも合わせてお味見頂きます。

元祖ジェノワーズケーキ「パスタ・ジェノヴェーゼ」

Torta pasta genovese

フランス菓子でケーキの基本となるジェノワーズ生地は、実はジェノヴァ発祥といわれています。ジェノヴァには、2つの「 パスタ・ジェノヴェーゼ」があるのをご存知でしょうか。

バジルペーストのパスタという意味の「パスタ・ジェノヴェーゼ」とお菓子の「パスタ・ジェノヴェーゼ」が存在します。

お菓子の「パスタ・ジェノヴェーゼ」は、フランス菓子のもとにもなったジェノワーズ生地のようなケーキ。卵やバターをいれて焼き上げたオレンジ風味のふわふわのスポンジに、粉砂糖をびっしりのせて食べる素朴でおいしいケーキです。

港町として繁栄を極めたジェノヴァゆえ、今では世界中の家庭で定番となったスポンジケーキの元祖がこの地に残っています。

世界の食卓を豊かにしたのはジェノヴァ料理があったからこそなのではと思えてならない、伝統あるリグーリア州のお菓子を作ります。

まだまだ始まったばかりのパスタ旅レッスン、どうぞお楽しみに。